2022/06/30 16:02
NAGIの由来は海が波立っていないことをあらわす「凪(なぎ)」からきています。
unaは自然と郷愁をテーマにしたブランドですので、シリーズ名も自然のことばからとっています。
波立っていない海も、よくよく見ると水面がやわらかく揺らいでいたり、小さな小さな波ができては消えていたり、均一な表情ではないことがわかります。
NAGIではディテールを削ぎ落としたミニマルな製品を提案していますが、その中にある奥ゆきを感じてもらえるようにさまざまな趣向を凝らしています。
普遍的で脱人工物なものを作る上で、ステッチは製品として成り立つまでのプロセスが見えすぎてしまいます。
こう縫ったんだな、とかこう繋いでいるんだな、といった情報は確かにおもしろいのですが自然のものにはそんなふうに分かりやすい継ぎ目は存在しません。
石や植物など、私たちの身のまわりに当たり前にあるものは実は神がデザインしたともいうべき成り立ちをしているわけです。
やはり人間がつくるプロダクトとの間には大きなちがいがあります。
もちろん、革を分子レベルに分解して好きな形に再構築できれば別ですが、基本は平面の革を立体的に組み合わせていくことになります。
その工程の中で少しでも自然のものがもつ佇まいに近づきたい。
そんな想いで日々ディテールや構造を研究・開発しています。
ステッチがなくすこと革の表情がより伝わります。
人間の目は自分で思うより多くの情報を一度に拾っています。
革とステッチがあると、気がつかないあいだにそれらのコントラストに目がいってしまいます。
革しかなければ、革の中にある微妙な色のムラやざらついた光沢、表面の繊維のテクスチャまで拾うことができるでしょう。
茶室の庭に人工物がないように、解像度をあげてものを見ようとするときに不要なものをなるべくなくしたいと考えています。
そしてステッチをなくすことでプロダクトとしてのクオリティも上がります。
プロダクトの表層にステッチがないことで摩擦による糸切れを防いだり、オイルメンテナンスをしやすくしたり。
佇まいが研ぎ澄まされていくと、同時に合理性ももたらされるものではないかと考えています。
密度が高く、それでいて革の内部にオイルを多く含んだベジタブルタンニン鞣しの革を使用しています。
ステッチをなくすつくりとの相性もよく、より革の艶やかな表情をたのしむことができます。
unaの革、特にNAGIのラインはカラーバリエーションが少ないのですが、基本的に「素上げ」の革を使用しているため必然的にそうなってしまいます。
素上げとは、染色した後の革に着色剤や仕上げ剤などの薬品をほとんど使用しないことで革そのものの表情を残したまま仕上げる革のことです。
自然からのインスピレーションを大切にしているため最低限の着色で仕上げたものを選んでいますが、そうなると表現できる色が限られてしまうのです。
また素上げの革を生産しているところもそれほど多くないため、その中からNAGIにふさわしいクオリティの革を選ぶとなると使える革自体がごく一部に絞られてしまいます。
そういった制約はあるものの、逆にいえば選びぬいた革の品質に関してはハイクオリティをお約束することができます。